●  アメリカシロヒトリ  ●

真夏の産物 アメリカシロヒトリ
  2000年、北国の岩手でも記録的な熱さが続いた。この猛暑の中で元気いっぱいだったのがアメリカシロヒトリ、岩手では、 北上川に沿って北から南まで異常な発生を記録した。
  1945年に終戦と共に日本にやってきたこの害虫、よほど日本の風土が合ったのであろうか。力強く生き続け、気象条件に よっては大発生を繰り返す。年2回ほどの産卵が定説とされているが、高温多湿の今年は、年3回程孵化したのではない だろうか。

  私の愛する庭園の一つに盛岡市の一ノ倉邸がある。明治40年に貴族院議員・東京都知事を勤めた安倍浩氏によって造成され、 その後一ノ倉氏に譲渡され、昭和49年に盛岡市の保護庭園として指定されました。8千平米というこじんまりとした庭園ですが 京都から移植のもみじを中心とした静謐な庭園であり、県内外から年間8万人の方々が訪れている。
  私は家が近いこともあって頻繁に訪れているが、今年は驚きであった。アメリカシロヒトリのオンパレード、6月頃から増え つづけ、8月の大繁殖、そして、秋風の吹き始めた9月10日に至っても庭園内が白一色の大群であった。大木の実のなる木を 特に好むようであるが、その木から頭や肩にボトリと落下してくる。決して気持ちのいいものではない。彼らは、大木から周辺の 密集した住宅街まで移動する。これほど増えるともう処置の施しようがない。並みの防除剤を散布しても抵抗力をつけて生き残る。 見上げる樹木は、部分的に晩秋の風情である。
  私は、雑然と密生する樹木の間伐が必要であること。徹底した防除対策を講じるべきことを提起してきた。市はこの要請に 応えてくれた。11月には、完全ではないけれども一部の樹木を間伐し、大分すっきりとした姿になってきた。

  アメリカシロヒトリの防除は、発生時期の5月頃卵から孵化した幼虫が、くもの巣のような天幕を張ったときに枝ごと切り 取り、焼却か踏み潰すなどの迅速な処置が必要だ。この時期を逃せば際限のない繁殖が続くことになる。どうみてもアメリカ シリヒトリを壊滅させることは不可能だが、根気と継続した市民ぐるみの防除体制が望まれる。さて、この冬は蛹として越冬して いるのであろう。アメリカシロヒトリと人間の際限のないたたかいが続いている。


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